誰がために何をする? VOL.2

 

 

到着した劇場では、すでに他の四人は到着していたらしく。

 

そして自分と同じく、皆の表情は複雑な顔をしていた。ただし、ゲドだけは終始無表情だったが。

 

しかし、それにしても…

 

(な、なんて濃いメンバーなんだ)

 

よくよくそろったメンバーをみて、ヒューゴが思ったのはそれだった。

 

 

城主のトーマス。

50年前の英雄の片割れのゲド

6騎士のパーシヴァル

 

…もう一人は、よく分かんないが、なんだかものすごく不幸が似合いそうな、ナッシュ

 

 

「なあ。どうやって、揃えたんだ?このメンバー」

 

疑問を口にせずにいられず、ヒューゴがナディールに尋ねると。

 

「まぁ…。いろいろです」

 

そう言って、仮面の奥の唇が『ニタァ』と笑みを浮かべたのが見えた。

 

「あ、そう…」

 

これ以上、聞くのが怖くなり、あえて深く突っ込むのを避ける。

すると、ナディールはホクホクと楽しそうに話し始めた。

 

「さて、今回の劇場公演に皆さん参加していただき、ありがとうございます」

 

「…だれも納得はしてないんだけど」

 

ヒューゴのぼやきはナチュラルに無視され

 

「まあ。皆様お聞きのとおりこの『男だらけの劇場大会inロミオとジュリエット』。まず、一番大事で要の配役である『ロミオ』と『ジュリエット』を決めたいのですが…」

 

ずさっ!!!

 

その言葉を聞いた瞬間――。一気に周りの空気に張り詰めた物を感じたのは気のせいではあるまい。

 

しばしの緊張が続いた後…

 

緊張をまず壊したのは、城主でもあるトーマスだった。

 

「す、すみません。あ、あの…本当にするんですか、コレ?どう考えても変ですよ」

 

「何を言うのです、トーマス様。従来の演劇を超えた奇抜なステージ!コレこそまさに今の観客が求める物なのです!!」

 

「…だけどあんた、ついこの間も『オオカミ少年』でコロクにブライト追っかけ回さしてたろ。あれはハッキリ言ってナレーションしてる俺がどんなにつらかったことか…」

 

げんなりして、そう言ったのはナッシュだった。すでに、何度かナディールの言う『奇抜』な演劇に参加させられているらしい。

 

「コロクくんの愛らしさと、ドラゴンを追い掛け回す非常な物語にシュールさを求めたのです。なぜか皆さんには相容れなかったみたいですが…」

 

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

 

 

全員の沈黙が続いた中。

 

 

ヒューゴはなぜ観客が減ったのか、今では完全に分かってしまっていた…

 

 

 


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