誰がために何をする? VOL.1

 

 

 

「ところで、ヒューゴ様」

 

「うわぁっ!!」

 

城内をブラブラと散歩していたヒューゴの背後に、いつのまにかひっそりとナディールが立っていた。

 

「な、なにナディール、いきなり。びっくりしたよ」

 

いまだ動悸を抑えられないヒューゴに、まったく意を返さず。淡々とナディールはつづける。

 

「わたくし、劇場をやっているのですが」

 

「知ってるよ」

 

それがどうしたの?とでも言わんばかりにヒューゴが視線を向けると

 

「ここのとこ、どうやら観客が少なくなったと思いまして」

 

「あーー…」

 

そういえば最近、戦ばかりで皆劇場どころではなくなっているかもしれない。

悪い気持ちで、何かを言いかけたヒューゴにそれをさえぎる様にしてナディールが

 

「そこで思いついたのです、これならば人も必ず入るという企画を」

 

「へぇ」と、思わず興味を持ってしまい、後から知る後悔も感じずヒューゴは尋ねた。

 

「どんなの?」

 

「すばらしい企画ですその名もずばり…」

 

とそこで一呼吸おき。

 

 

 

「『男だらけの劇場大会inロミオとジュリエット』です」

 

 

 

…それだけ聞くと、少しだけ気の遠くなったヒューゴは

 

「あ、俺そういえば……鍛冶屋で武器を鍛えに行くとこだった、じゃっ!」

 

逃げようとするヒューゴ。それを見越していたのかナディールは

 

ガチャン。

 

「えっ?」

 

奇妙な音と共に腕に異物のあたる感覚に気づいて見ると、ヒューゴの腕には手錠がしっかりとかかっていた。

 

「いけませんヒューゴ様。あなたもアンケート上位リストの候補者ですので、参加してもらいますよ」

 

「な、なんでーーっ!?そんなので人が入るわけないだろっ!!てか何だよそのアンケートって!」

 

猛烈にいやな予感のするヒューゴに、さも楽しそうに語るナディールは

 

「いえ、城内の女性100人に聞きましたアンケートにより、一位が『男性陣でのロミオとジュリエット』で、その候補アンケートをとりましたところ。ゲド様・トーマス様・ナッシュ様・パーシヴァル様…そしてヒューゴ様となりましたので」

 

「なんなんだその滅茶苦茶なアンケートはっ!」

 

「ちなみに、得票数は一票なのですが、『緑の布を頭に巻いた棒の子』と『頭に金のワッカがある男の子』というのは誰なんでしょうか?」

 

「知らないしっ!」

 

などなど、散々口論しつつも、よく分からない力で結局ヒューゴは劇場まで引きづられて行くことになってしまった…

 

 


つづく




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