外は真夜中の静けさに包まれている。
神戸の直樹のマンション
カチカチ、ガチャ
パチッ部屋の中に蛍光灯の明かりがともる。
直樹「フゥ〜っ・・・」ため息をついてベッドにドサッと倒れこむ。
目を閉じる。
目を開け、すぐ側にある電話を見る。
電話の「留守」のボタンが青く点滅していることを発見する。
「留守」のボタンを押す。
ピッ
留守電「12件デス・・・・ピーーーーーーーーッ
あっもしもし!入江君!!!琴子です!今日も夜勤なの〜 ???今日ね〜真里奈がね〜船津くんと〜ブチッ
ピーーーーー
ピーーーーーーーーッ
もっしも〜し???いりえく〜ん???ごめん ね〜さっきのは時間切れになっちゃったの〜。・・でね〜真里奈ったら・・・・ ・・・・・・・(以下同様のメッセージがつづく)
うんざりした顔の直樹、だが止めずに聴いている。
ピーーーーーーッ
もしもし???入江君?今日もお疲れ様〜〜〜。あのね、直接 電話で話したかったんだけど・・・・入江君・・・忙しいんだよね・・・無理だ
よね・・・あのね、来週の土曜日・・・その・・・私の卒業式があるの・・・き、
来てくれ・・・ないよね・・・入江君、忙しいんだもんね・・・来られないよね
・・・。
あっじゃあ・・・切るね。おやすみなさい・・・。
ピーーーーーーーッ
それまで無表情だった直樹が「プッ!」とふきだして笑う
直樹「ったく・・あいつは・・変なところで気を使いやがって・・・」
立ち上がりキッチンのほうへ、冷蔵庫からカンビールを取り出す。
プシッ!ベッドに戻り、カンビールを飲み始める。
ピーーーーーーーッ
(入江ママ)もしもし?お兄ちゃん???いないの???
「ブハッ!!ゴホッ!ゴホッ!!!!」
直樹、入江ママの声に驚き、ビールを吹き出してしまう。
お兄ちゃん!よ〜〜〜〜く聞きなさい!!!っ来週の土曜日の、琴子ちゃ んの卒業式にはかならず東京に帰ってくるのよ!!!!この一年間、琴子ちゃん をほッったらかしにして来たんですからね!!!!愛する妻の卒業式ぐらい来な くちゃ、夫婦とは言えないわよっ!!!いいですこと???!!!!土曜日です からねっ!!!ブチッ
ピーーーーーーッ 以上デス」
直樹、アゼンとした顔をしている。
少し笑って、
「さて、どうするかな・・・」
そして、長い長い夜が過ぎてゆく。
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