続・笑顔のままでパロディ〜記憶喪失編〜

 

※この話はイタズラなKissのコメディです。かなり、ボケがはげしい琴子や、ちょっと、かっこ悪い入江くんを見たくないという方は、ブラウザからお帰りいただくことをお勧めします(^^;

 

 

Version 9 琴子side

 

―11月21日― 

 

 

 

「さぁさ、琴子ちゃん。ここがお部屋よー」

といって、入江くんのお母さんに部屋を案内されたあたしが見たものは…

「うわぁっ、すごーいっっ」

思わず感嘆のため息が出るくらい、総フリルとレースのちりばめられた部屋だった。

―ちょっと、すごすぎるけど…。

「ほほほ、そう言ってくれてうれしーわぁ、さぁ、琴子ちゃん自分のお部屋なんだから、遠慮せず入ってちょうだい」

「あ、はい…」

と、促がされて、あたしは一歩、その部屋に足を踏み入れる。

なんだか居心地が悪くて、キョトキョトとあたりを見回す。

 

―鏡台にある、使いかけの化粧品(たぶんあたしの)―

―クローゼットにかけてある、あたしの服(らしきもの)―

 

(…ぜんっぜん、覚えてない)

 

思わず、がっくりくるあたし。

入江くんには、昼間、あんな事言ったけど、はっきり言って、どうやったら記憶が戻るのか、検討もつかないのよね。

いちおう、自分の持ち物とか見たら、何か思い出すかもって思ったけど…、あんまり効果なさそう。

と、そんな物思いにふけっていると、お母さんはそれを察してか

「じゃあ、琴子ちゃん。わたしはちょっと、これからパーティの用意するから、琴子ちゃんは、お部屋でゆっくりとしてちょうだい。あとで、お兄ちゃんも様子見に来てくれると思うから」

と、言ってお母さんはパタパタと階段を下りていった。

あたしは、パーティと聞き、あたしの退院祝いののパーティと思い、それ以上は深くは追求せず、その背中を見送った。

 

 

 

お母さんが去ってから、あたしは取り合えず部屋を一周してみたものの、あたしはやっぱり落ち着かない気持ちになる。

 

(原因は…わかってるのよね)

 

と、あたしは意図的に視界から外していたそれらに目を向ける。

 

あたしと、入江くんが写っている写真(なぜか入江くんは不機嫌そう)やクローゼットに一緒に掛かっている男物の服。それに―

 

―絶対、一人用じゃないベッド…

 

(うわぁぁぁぁっっ)

 

耳まで真っ赤にして自分の動悸と息切れを抑えられずにいるあたし。

だって、つまり今日から私がここに住むってことは、入江くんと部屋が一緒ってことで…

 

「…なに一人で遊んでんだよ」

 

「ひえぇぇぇっっ!?」

 

背後から入江くんに話し掛けられ、あたしは2mくらい、そこから飛び退る。

 

「…なんなんだ、その反応は」

あたしの行動に、あきれる入江くん。とりあえず、あたしはその場をごまかそうと

「え、えーと、そう!ちょうど今、記憶喪失の手がかりを捜してて、このタンスをちょっと見よーかなぁと、思って」

と、あたしは、飛び退った先にあった、目の前のタンスをバシバシと叩く。

思いっきり不信そうに、入江くんはあたしを見るが、それ以上は深く追求しなかった。

それを見て、とりあえずホッとするあたし。言った手前、調べないわけには行かないタンスを開ける。

 

中は、きちんと整理されていて、入っているものが見やすいようにされていた、が、特に、あたしが目を引くものや記憶に引っかかるモノもなさそう…と、思ったとき、ふと、隅にある小さな箱に気付いた。

「…っ、それは」

思わず、その箱を手に取るあたしに、入江くんの声が掛かる。

「?」

この箱になにか意味があるのかな、と尋ねるように、あたしは入江くんの方を見るが、入江くんはあたしの方を見るだけで、何も言ってはくれなかった。

まるで、この中身を見た、あたしの反応を見逃すまいとしているように。

なんだか、入江くんに見られているのを緊張しながら、あたしはその箱を、そっと、開けた。

 

そして、その開けた箱の中には―――

 

「…なにこれ、―――低周波?」

 

中身は、どこからどう見ても、低周波マッサージ器だった。

…これが、あたしや、入江くんになにか関係があるものなの??

 

はっ!ま、まさか…

 

あたしは、自分がたどり着いた結論を入江くんの瞳を見つめて言う

「もしかして、入江くんが腰痛もちで、あたしにそれを秘密にしてたんだけど、ある日それがばれて、入江くんはそれを打ち明けて病院で治療。それで晴れて腰痛がなくなって、もう二度とは使わなくなったモノ。それがこれなのねっ!!」

「…どっから、そんな作り話がでるのか、一度じっくり聞きたいもんだな」

こめかみに血管を浮かせながら、こっちをにらむ入江くん。てことは、やっぱ違うのね…(当たりまえ)。

でも、マッサージ器なんて、ほかにどう考えればいいのよ、第一、何でこんなのがあるのかもぜんぜん検討もつかないんだもん。

…なんて、あたしが一生懸命考えてると、入江くんは、あたしが手に持っていたマッサージ器を取り上げた。

「ま、こんなもんで思い出すとは、思ってなかったけどな」

と、言って、あたしの後ろのタンスに入れると、パタンと閉めた。

「いまのって、やっぱりあたしと関係あるものなの?」

マッサージ器とあたしが、一体どんな関係でつながっているのか、さっぱり分かんなくて、思わず入江くんに尋ねる。

「お前が、はじめてプレゼントでくれたもんだよ」

入江くんは、半眼であたしのほうを見て、そう言う。

 

・・・・・・・記憶喪失前のあたしって、一体・・・・・・??

 

ちょっと、自分がわかんなくなったかも…。

思わず記憶喪失前の行動に、頭を抱えて、うなだれるあたし、ふと、その目の前に入江くんの足があった。

そして、いつのまにかあたしと入江くんの距離が近づいているのに気付く。

「!!!!」

またしても、入江くんとの距離をとろうとするあたし、だけど―

ガシッ。

離れようとする、あたしの腕を引っつかまえる、入江くん。

「いっ、入江くんっ!?」

「…さっきから、その変な態度、なんなんだよ」

「えっ、えぇっ?変??」

と、うろたえながらも、何とか腕を外そうとするあたし。

耳まで真っ赤になっているあたしは

まさか、いかがわしい事を考えていたとは言えるわけないので(なに考えてんだ)、なんとか言い訳を探そうと努力するけど、今度こそ何にも思い浮かばない。

顔を赤くして、目の泳ぐあたしは、突然、掴まれていた腕をぐいっと引っ張られた

「きゃっ!!」

ポスッ、と引っ張られた先にある、入江くんの胸に落ちる。

そして、きつく入江くんに抱きしめられ、あたしはすでに、半パニック状態。

(ええええっっ!?なにが、なんで、どうなってるのーー!!)

入江くんの腕の中で、もがくが、まったく動けそうになかったあたしは、ふと、入江くんのあたしを抱きしめる腕がかすかに震えてるのに気付いて、入江くんの顔を見る、すると――

 

「いいかげんにしろよ」

 

「へっ?」

あたしは、入江くんの怒りを押し殺したような声にびっくりする。

いいかげん??あたしなにか、いいかげんなことしたっけ?

言われた事がさっぱり分かんなくて、きょとんとしてしまうあたし。それを、知ってか、知らずか、入江くんは声を更に低くし

「病院から目が覚めたら、いきなり俺見て叫ぶわ…、情けない顔してたと思ったら、金之助には抱きつく…、しかも、俺に診られたくないって言って、西垣先生に検診頼んだり…、あげくに、俺から逃げるって、どういうことなんだよ」

「それは…」と、声を出そうとするが、入江くんにきつく抱きしめられていて、くぐもった声しか出せない。

それを、あたしが、また抵抗して、逃げようとしていると思ったのか、さらに力を込める入江くん。だけど――

「い、いたっ」

あたしが、そう声を上げたと気付くと、あたしの頭上で、入江くんのはっ、と息を飲むのが聞こえて、腕の力を緩めた。

「入江…くん?」

あたしは、恐る恐る、入江くんに声をかける。

 

だって…、変わらない、いつもの入江くんの瞳が少し陰っているように見えて…

 

あたしは、どうしていいか分からず、ただただ、抱きしめられていた――

程なくして、入江くんはあたしを放すと、あたしを見て、いつもの皮肉げな顔をして、ささやいた。

 

「おまえって、お前が事故にあって、俺がどれだけ心配したかなんて、考えた事もないんだろうな」

 

「…え?」

「じゃ、俺は下へ行くから。たぶん、もう時期したら、お袋がパーティの準備済んで、お前呼びにくると思うよ」

と、言うと、入江くんは、あたしの顔を見ようともしないで、部屋をでようとする。

「ま、まって!」

あたしは、思わず呼び止めてしまう。そして、入江くんの下へ駆け寄ると

「ごめんなさい…、あたし…、あたし…」

自分でも、入江くんになにを言おうとしてるのか、分からないけど、とにかく、入江くんに謝りたかった。

でも、それをつむぐ前に、あたしは入江くんの瞳とぶつかる。

 

あっ…。と、言うまもなく、入江くんの唇があたしの唇に優しく触れた。

 

そして、触れたときと同じくらい、優しく、それは離れて…、あたしは、頭の中が真っ白になる。

 

そんなあたしの頭を、入江くんはクシャとなでると

「じゃーな」

と、そう言って、今度こそ去っていった。

 

あたしは…、どうして言いか分からず。その場で呆然としていた。

 

だって、だって、あたしは知っていた―――

 

入江くんの、キスをするときの目の伏せかたや

耳に感じる、入江くんの吐息

唇を離すときに、あたしを見つめる仕草…

 

知っているのに、覚えていない…。

これって、昔、時代劇のテレビで見た、悪代官の「身体は正直よのぉ」とか、そー言うのなの!?(どういうのだっ)

 

あたしは、そんな考えに行き着き、その場にへたりつく。

なんか、身体が覚えてるって、すっごくエッチな気がする……。

 

そして、はっと、気付けば、結局あたしの問題は一個も片付いていない事に気付いた

 

(け、結局、あたしは今夜どうすればいいのよーーー!!!!)

 

 

 

赤くなったり、青くなったりするあたしに、お母さんの呼び声が聞こえるが、それは、ただ耳を通り抜けていくだけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

2ヶ月ぶりに「笑顔のままで」の続きを書くことが出来ました…、ものすごく遅くて、ごめんなさーい!!

ほんと、めちゃめちゃ遅い更新です(^^;

しかも、PBSに描いたうそ予告は見事にウソに(爆)

いやっ、ウソじゃないんですが、書いても、書いてもそこまでたどり着かなくて、とりあえずここで切らせていただきました(汗)

しかも、前半はすごいペースで書いていったにもかかわらず、後半、一行に30分もかかっていました(まじで)

やっぱり、soroにシリアスは向かないらしいです…(涙)

 

 

 

 

 

 

戻る つづく