<幕間> 沈んでいく夕日に目をやれば、窓から見える下方には、帰宅途中の生徒の姿が見える。 久賀はその風景を眺めると、何を考えるでもなく教室の入り口を見る。 教室にはだれも無く、みのりの姿も無い。 いや、わざと先に帰らせたのだ。 そうして、視線の先の入り口に現れたのは、 「もう一つ、聞きたかったのを思い出してね」 「………」 現れたのは、長身で黒髪の少女。 文生は、教室に入り込み、久賀の腰掛けた机まで悠然とやってきた。 「大体の事情は、みのりから聞いたよ。でもやっぱり分からないことがあったから是非聞きたくてね」 「だからって、おんなじ手を使うな」 久賀はそう言ってピンクの封筒を文生に投げつけた。 「かわいいだろう?結構気に入ってるんだ」 「……帰る」 席を立つ久賀に、静かに問いただす。 「なぜ、お前はここにいるの?」 「…みのりから聞いたなら」 「聞いたから、聞いているの」 そう言うと、文生は至近で久賀を見詰めた。 「前の学校では、ほとんど学校に出席をしていないってことになっているようだね、久賀さん?」 「………」 「じゃあ、どうしてここでもそうしない?たった半年、学校に来ないくらいどうということでもないのに。どうしてお前は今、この学校に休まず来ているんだろうね。こんな格好までして」 「………」 久賀は、今度こそ文生に背を向け、教室の扉へと向かう。 そんな久賀に、鋭い視線を向ける、文生。 「そこまでして、みのりと一緒にいる理由はなんだっ」 ぴしゃりと閉まる扉の音。 それを苦い顔で見詰める文生。 結局、久賀がその答えを応えることは無かった。
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