あんたなんて、大嫌い!!

 

1.嵐の前の…

 

 

 

非常識な親のせいで、あたしは今、非常に危機的状況に陥っている。

 

 

3日前。

 

突然現れた、父曰く「婚約者」こと久賀達也こと、みの虫。

 

これまた、非常識なことに一緒に暮らすことになった。しかも、二人暮し。

 

そこまではいい。

いや、よくないけど、百万とんで一歩くらい譲って妥協しよう。…なっとくはしないけど。

 

 

ただ…

 

 

あたしは、瞑想のごとく頑なに瞑っていた目を、今一度開いた。

そして、何一つ変わらない現実がそこにあった。

 

「なぁんであんたが、まだ学校にいるのよーーっ!!」

 

教室にあたしの叫び声は…響かず、内緒話の格好で、あたしは女装して教室に大人しく座るみの虫に耳打ちした。

 

「うるせーな、しかたないだろ」

 

「しかたないですって?どこをどうしたら、仕方ないってことになるのよ」

 

「だからだな…l

 

みの虫は本気で煩そうな顔をして、周囲を見渡すと、やはり自分たちがどうしても目立っているのに気づき

 

「ここじゃ話しにくいから、ちょっと来い」

 

そう言って、あたしを引きずって行った。

 

 

人気の無い階段の踊り場で話すみの虫。

 

「俺だって居たくて居るわけじゃない」

 

「じゃあ、なんで居るのよ」

 

「だからだな…、俺の学籍がここにある限り、前の学校に戻りようが無いだろ」

 

「学籍?そんなの、先生にでも言えば…」

 

「ここのトップがお前の親父と組んで、俺をこの学校に入れたんだぞ、どうにかできると思うのかよ」

 

「うっ、それは…。あっ、でもそうよ!あんたが男だってばらしてしまえばいいじゃない、そうすれば何が何でも戻れるわよ」

 

うむ、我ながら名案。と、そう思ったあたしだったが、みの虫は眉をひそめて

 

「それで戻れるならな。けど、何処にそんな保障がある?男を女子高に入れる奴らだぞ。もし前の学校に戻れなかったら、俺はこの学校で女装してた男として卒業まで生き恥さらして過ごすのか?死んでもごめんだ」

 

「いや、でも卒業してその後、履歴書に女子高卒って書く気?あんた」

 

「半年したら、あんたの親父が帰ってくるんだ。そのときになんとか戻してもらう」

 

うーん、言ってることは間違ってないはず…なんだけどなぁ。

…なんか、いまいち納得できないよーな。

 

唸っているあたしを見てどう思ったのか、みの虫はポンッとあたしの頭をなで

 

「大丈夫。女子高だろうが何だろうが、半年くらい平穏無事にやり過ごせるさ」

 

「……あのねぇ」

 

一体その自信はどこからくるんだ!?

 

 

気楽そうに、教室に戻るみの虫の背中を見るあたし。

 

 

まさか、あたし達背後でのその会話を聞いていた奴が居ることも気づかず…

 

 

 

なんだか人生で一番長い半年を過ごしそうな、そんな予感を感じるあたしだった。

 

 

 

 

 





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