主役のいないティータイム
※ 20巻の琴子が神戸に行ってしまったときのお話です。
「ったく!何やってんのよあの子は!?」
がちゃんっ、喫茶店で出されたホットミルクティーのカップをテーブルにたたきつけて、桔梗はヒステリーに前の三人に話し掛けた。
「ほんと、琴子が神戸に入江さんに会いに行ってからもう5日もたってるんものね、あの子いつになったら帰ってくるのかしら」
すでに、あきらめ混じりに真里菜がコーヒーのブラックをすすりながら言う。
「あ、でも。何かやむにやまれぬ事情でこっちに帰れないのかも…」
『それは、ないっ』
智子が、琴子のフォローをしてみるが、あっさり全員に否定され、さらにみんなのなぜかは分からないが迫力に圧倒され、だまってミックスジュースに口をつける。
「どうせあいつのことだ、なんだかんだ理由をつけて居座ってるに決まってる」
そう言って、啓太は自分の注文したトマトジュースにタバスコをたっぷり振る。
「ちょっ、ちょっと啓太。それかけ過ぎじゃない?」
「いいんだよ、俺はこれくらいがちょうどいいんだ」
と、いうが自分でもちょっとかけ過ぎたと思い、内心あぶら汗をかく。
「なあにー?啓太。あんたまだ、琴子のコト好きなのー?」
ぶっ!!
突然振られた話題に、飲んでいたタバスコたっぷりのトマトジュースが気管に入り思いっきりむせる。
「うえっ、ごほっ、なっ、なに言ってんだ桔梗!!」
「だって、あんた琴子が神戸に行ってからずっと機嫌悪いじゃなーい」
「ちげーよ!あいつが休んだおかげで俺たちのグループが遅れてるから怒ってるんだ!!」
「そう?あたしはどっちかと言うと琴子のいないおかげでいつもよりスムーズにやれてると思うけどー?」
「うっ、それは確かに…。じゃなくてだな、なんていうかその、仲間の連帯というか、一致団結と言うか…。とにかく!何の連絡一つもなしに休むのが気に食わないんだよっ!それにっ」
びしっと桔梗を啓太はにらみつけ
「お前だって、さっきまであんなにヒステリーに怒ってただろーが」
「あたりまでしょっ、あー入江さんと神戸のマンションで二人っきりなんて、うらやましすぎじゃない!今ごろいちゃついてるとか考えると悔しくて、悔しくてっ」
「いちゃつ…て、おまえ」
「なによぉ啓太。赤くなって、真っ昼間からなに想像してんの?」
「してねーよっ!お前こそなんてこと想像してんだっ!」
「あら?聞きたい??とりあえず放送禁止用語が、ひと段落に10個くらい出てくるけど…」
「いや、言うな、黙ってろ。」
「そぉお?残念だわ…」
そこで、ちょうど桔梗を啓太の会話が切れたのを見計らって智子が
「あの、ここ喫茶店なんだけど…」
はっ、とみんなが気付いたときにはすでに周囲の人間がこっちを注目していた。
その視線に居たたまれなくなった啓太が
「そ、そろそろ出るか…」
そう言うとみんなも、「そーね」、「でよっか」と、いってそそくさとその場を離れた。
4人は店を出て、帰るため駅へと歩く。
結局、その後もここにはいない人間を主役に話題が始まる。
「もーぜったい、今度はあたしが神戸に行くわっ」
「えー、モトちゃん、行くならあたしもー」
「お前ら…、あんなやつのとこ行ってなにが面白いんだ」
「それに、みんな行っちゃったら。今度は琴子さん一人になちゃうわよ」
「って、俺は行かないからな」
「何いってんのよー、あんたと琴子二人っきりになんて出来るわけないじゃない」
琴子が帰ってくるのはあと二日後、その間に話がどこまでエスカレートするのかは、それは桔梗たち4人だけの秘密である。
完
あとがき
なんとなく、何気ない日常の話をかきたかったのでこんなのになってしまいました(^^;
起承転結もあったもんじゃないですね。徒然にかいたみんなの会話です。なんとなーく、神戸に行った後みんなして、こんな風に盛り上がったんじゃないかなーという感じで書いてみました、落ちもなくてすみません(汗)