にたもの夫婦。

 

これは、二人が神戸と東京、別々で暮らしていたときのお話です。(※パラレル少々)



−朝−

 

kotoko Side

じりりりりっ

目覚まし時計がなり。琴子は「う〜」と、寝返りをうつと
「入江くーん…、目覚まし切っ…あっ」
がばっと起き上がり、ぽりぽりと頭をかく

「入江くん、そういえばいないんだった…」

いきなり朝から、しょぼんとしずみ、琴子は起き上がるのだった。


Naoki Side

じりり…カチッ
鳴ったとたんに、目覚ましをきり、入江はまだはっきりしない頭をすっきりさせるため、シャワーを浴びにいく
すっきりして、朝ごはんを食べようと洗面所から出て

「琴子、コーヒー…あっ」

琴子がいないのに気づき、入江は納まり悪く、ヤカンに火をつけるのだった。

 

−昼−


Kotoko Side

「琴子―、はやく、学食いくわよー」
「あ、うん」
と、大学の授業が終わり、昼ごはんを食べるため、学食に行く琴子。
そわそわと、辺りを見回してると
「あんた、何キョロキョロしてんのよ」
一緒に食べる、幹が胡散臭げに、琴子をみる。
「あはは…。なんでもない、なんでもない…」

 

…条件反射で、入江くんを探す自分がちょっとむなしくなった―


Naoki Side

「入江、めし食いにいこーぜ」
「ああ」
そういって、病院の更衣室で着替えて、食堂に行く、入江
すると、ふと周りを見渡している自分がいた。
「入江…おまえ、何びくびくしてんの?」
「いや、別に…」



遠く離れた神戸だというのに、いまだに背後から琴子が来るのではと、そわそわしている、自分にあきれていた。

 

―夜―

 

 

Kotoko Side

 

「こーとこっ!今日は、コンパいくわよー!!」

 

授業が終わり、琴子が帰宅しようとすると、背後から真里菜にホールドされた

「ぐっ、ま、真理奈!?…あたし、今日はいいや、なんだか気分乗らなくて…」

「何いってんの、あんたここんとこ毎日言ってんじゃない、今日はぱーっと行くわよー!!」

「ちょ、ちょっと、あたしは、だから行かないって……、あ――――っ!!」

そう言って、強引に誘う真里菜に半ば引きずられるようにして、琴子は連れられていった。

 

がやがやがやがやがやがや……

 

居酒屋の賑わいとともに、コンパの仲間の声も混じる。

「まー、琴子ちゃんも飲みなよー」

「え、あ、あたしはいいです」

「なんでぇ?こんなとこで飲まなくてどうするのー、ほらほら…」

と、琴子のとなりで、やたら酒を勧める男は、もうすでに出来上がっているらしく、琴子は困った顔をし、心の中で真里菜に悪態をついていた。

「はぁ、でも、お酒はあんまり飲むなって、言われてるから…」

「何で?あーっ、わかった!!お父さんにでしょ?かわいいなぁ、琴子ちゃん。ちゃんとお父さんの言うこと聞いて」

なんて言いつつ、隣の男は琴子のコップにビールを注ぐ、ぜんぜん琴子の話は聞いてない。

「ちがうわよっ、あたしのだんな様に言われてるの!!」

そう言って、きっ、と隣の男をねめつける。

さすがに、その言葉は通じたらしく、男はひるむ…が、それも一瞬だけだった。

「えーっ、てことは琴子ちゃん、結婚してるの?まじー、人妻じゃん」

「そーよ」

やたら自慢げに語る、琴子。それを隣の男は、やたら面白そうにみると

「へぇ、じゃあ琴子ちゃん、何でこんなとこ来てるの?旦那いるんだったら、帰ってご飯作ってあげなきゃ。旦那かわいそ―じゃん」

「そ、それは…、入江くん単身赴任しちゃってるし、今日だって、ほんとは帰るつもりだったのに真里菜が…」

「げっ、旦那、単身赴任してるの!?」

「そ、そーだけど」

それがなに?と、琴子はたずねると

「まじーじゃん、それ。ぜーったい、旦那、浮気してるよー」

「なっ!?」

突然の男の言葉に、唖然とする。

「男が奥さん置いて仕事なんて、浮気しほーだいじゃん、絶対、現地妻とかいるよ」

「………っ!!」

あまりの事に、言葉が出ない。

 

怒りに身を任せて、すくっ、と琴子が立つと

 

「帰るっっ!!」

 

と、真里菜が静止するのも振り切ってスタスタと帰っていった。

 

 

Naoki Side

 

「おーい、入江。飲みに行くぞっ!」

「あ、おれ今日は、ちょっと…」

「なーに言ってんだ、今日のは新人歓迎会でもあるんだぞ、それに、今日はお前が来るからって、別の医局の看護婦も来るんだからな」

「だったら余計に…」

丁重にお断りします。と、入江が口にする前に

「おら、着替えたなら行くぞっ」

「……」

 

有無を言わさない強引さで、入江は連れて行かれるのであった。

 

わいわいわいわいわいわいわい…

 

和風の雰囲気の飲み屋で、すでに入江のいるグループもかなり出来上がっていた――

 

「え〜、入江先生結婚してるんだー」

「…そうだけど」

それが、なにか?

 

口にはださないが、目でそう言う。

 

すると、隣にいた看護婦(たしか、山口とかいったか)が、少しひるむ。

そのまま怯んだままでいいのに、山口はなおも入江に食い下がり

「奥さん、東京にいらっしゃるってことは、入江さんお一人でこっちにきてるんですか?」

「うそっ、じゃあ、お一人で寂しいでしょ〜?」

「………」

なぜか、反対側にいた看護婦(こっちは、名前もわからない)まで話に加わる。

しかも、少し当たっているだけに、何もいえない。

東京を出てから、一週間。あの騒々しい家から、一人暮らしのマンションに住むと、いっそう、静かなのが気になった。

お袋の小言や、祐樹の学校での話、チビのじゃれあいや、琴子の…

 

琴子の騒々しさは、すでにとっくに染み付いたものだったのか、一人になってはじめて、それがないのが、寂しい事に気付いた。

 

「じゃあ、奥さん、今ごろ浮気なんてしてたりしてー」

「…は?」

少しの間、物思いにふけっていた入江は、突然言われた言葉にうっかり間の抜けた声がでた。

―なんていった、こいつ。琴子が浮気?

 

そんな事は、天地がひっくり返ってもありえない。

 

思わずあっけにとられて、山口を見るが。それを、彼女はなにを勘違いしたのか、更に語調を強めてこちらに擦り寄ってくる。

「あたしだったら、信じられないもの。こんな素敵な旦那さんと一緒にこないで東京に残るなんて」

「………」

山口のその言葉に、入江は目を細め、冷ややかに彼女を見る。

―この女は知らない。琴子が、どんな思いで別々に暮らすことを決意したのか

「もしかして、奥さんにやましいことがあったのかも」

そう言って、入江に身体を近づけ、手に触れようとする

知らないから仕方ない。入江は頭でそう思っても、理性では納得しきれず…、はっきりいって、切れた。

入江が、隣にいる彼女を突き離すように立ち上がった瞬間――

 

「そんなわけないでしょっ!あたしはいつだって入江くん一筋よ!!」

 

飲み屋の隣テーブルとの境を、押しのけて入ってきた女が高々とこちらに叫んでいた。

 

「「「………」」」

 

同僚の医者や看護婦たちは、驚きのあまり声も出ない。

かくいう入江も、あきれて声が出なかった。

 

「あーっ、ちょっと、そこ!入江くんから離れなさいよっ」

そう言って、こっちにズカズカと入り、入江と山口の間に割り込んで、山口の手をペシッとはたく

それで、ようやく我に返った山口が

「あ、あなたもしかして入江先生の…」

「妻です!」

それが、なにか?

つい先ほど、入江が向けた目と同じ目で山口に問い掛ける琴子に、思わず山口はたじろぎ…

「あ、そ、そうですか」

そう言って、数十センチあとずさった。

 

―プッ

 

すると、そのやり取りを隣で見ていた入江は、ついに笑いをこらえきれなくなり、吹きだす。

「ははっ、はっ、こ、琴子。おまえ、面白すぎ」

入江は涙目まで、浮かべながら、笑っていた。

 

「い、入江くん?」

「入江先生…?」

 

一週間ぶりの入江に、いきなりこんな醜態をみせて、挙句に大笑いされ、真っ赤になる琴子と

入江がこんなに笑ったところなんて、見たこともなかった山口が、同時に入江に問い掛ける

 

すると入江は、琴子の腕を引いて立ち上がり

 

にこり、と同僚たちに微笑むと

 

「妻が迎えに来たみたいなので、今日はそろそろ帰らせていただきます」

そう言って、スタスタとその場を去っていった。

 

 

あとに、残されたものは、ただただ、呆然としていたのであった。

 

 

―夜 ラスト―

 

飲み屋をでたあと、無言で歩く入江と、その後を気まずそうについて行く琴子。

ただし、手はしっかりと握られていたので、ついていくというよりは、引きづられているに近かった。

 

「入江くん、そ、その。別に、その、後をつけていたわけじゃなくて、たまたまが、偶然になっちゃって…、昨日、失礼な人が変なこと言うもんだからちょっと、気になって…」

長い沈黙に耐え切れず、しどろもどろに、よく分からない言い訳をする琴子。

「………」

「あっ、で、でも、別に疑うとか、そんなんじゃなくて…、えーと、なんていうか」

「………」

「…入江くん、怒ってる?」

さっきから、ずっと何も話さない入江に、恐る恐る尋ねる琴子。

それでも、無言で歩き続ける入江に

「入江くん…?一体どこ行くの??」

「二人っきりになれるとこ」

「あ、なるほど…、って、えぇっっっ!?」

琴子の叫びと同時に、止まったそこは、小さな公園だった。

入江は前の自販機でジュースを買うと琴子に渡し、近くのベンチに腰掛けた。

プシッ、と入江は自分の分のコーヒーの缶を開け

もう一度、先ほどの乱入事件を思い出したのか、クスクスと笑う

「ったく、お前といるとホントあきねーな」

「…どうせ、バカだと思ってるんでしょ」

「ああ」

「………」

あんまりにも、きっぱりといわれ、琴子は無言で入江の隣に腰をかける。

「ところで、お前なんでいるの?」

「えっ…!さっき言ったじゃない」

「あんな訳わかんない説明で、分かるわけないだろ」

たしかに…さっきは説明というより、すでに文章にもなっていなかった。

説明しようと琴子は、つい先日あった事を言いかけて…やめた。

そして

「寂しかったんだもん」

そう言って、入江の腕に寄りかかる。

一週間ぶりの入江の体温に心が温まる。

「この間なんて、あたし、入江くんがいると思って、寝ぼけて入江くんに目覚まし切ってもらおうとしちゃうし、学食では入江くんのこと捜してるし…、いないって分かってるのに。重症だよね」

「……………」

その言葉に、思わずあさっての方を向いて、入江はポソリと独りごちる。

「俺たちって、結構にてるのかもな」

「えっ?」

なんて言ったか、聞こえなかった琴子は思わず、聞き返す

 

「いや、なんでもない…。それより―」

 

と、質問を適当にあしらい、隣にいる琴子を、ひょいと、自分の前に座らせ、山口に向けた目とは、また違う目で見つめて、ささやく

 

 

 

 

「夜の公園で二人っきり…、これからどうする?」

 

 

 

 

言われた琴子は、顔を赤くして、もう何も言う事が出来なかった――

 

 

 

 

 

―あとがき―

…なんでしょう、つくづく神戸編の好きなsoroです。

少ない作品の中で、3つも書いてますよ、まったく(^^;

そして、soroの入江くんてなんでこう、「むっつり○○○(自主規制)」なんでしょうか・・・(涙)

もうちょっとこう、リップサービスがどうして出来ないものか・・・、謎です。

やっぱ、基本的にsoroの中の入江直樹像が「むっつり○○○(しつこい)」だからでしょうか。

つぎはもっと、夫婦らしい会話を目指したいもんです(^^;

 

―最後に、ここまでsoroの駄文を読んでくださり、ありがとうございましたvv

 

 

 

 

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