「最善策」  (銀魂SS)









たぶんこれが最善。
たぶんこれで最良。


その日、神楽は幸せの発想に酔いしれていた。
なぜ今まで気づかなかった、なぜ気づこうとしなかった。


万事屋のソファでテレビを見ながらニタニタと笑い、
ダメな男ども二人が帰ってくるのを神楽は待っていた。

この大発見を、二人に知らせなければ、
そうすれば、みんなみんなずっと幸せになれる。


「はー、ただいま神楽ちゃん」
「おーい、暴食娘ー、ちゃんと大人しくしてたかー」


買物から帰ってきた二人に神楽は満面の笑みで迎えた。


「お帰りアル、二人とも」

「ど、どうしたの、神楽ちゃん。何か変なもの食べた?」
「おい、気持ちわり―な、どうした、腹でも下したか」

どこまでも、失礼をぶっこく二人に、神楽は寛大な笑みをもって、それを許した。

「あのね、銀ちゃん。私、すごいこと考えたアル。これ、めっちゃすごいネ。ノーヘル賞ものヨ」
「あ、ノーベル賞ね、ノーヘルだと罰金とられるから」

いらぬツッコミにも目をくれず、神楽は自分の大発見を二人に告げた。

「銀ちゃんと、新八と、私、結婚すればいいアル」



それはもう、盛大に目の前の二人は固まっていた。



「どうした2人とも、ついに糖でも切れたか」
「あ、あのね、神楽ちゃん。神楽ちゃんの星は知らないけど、地球ていうか日本は一夫一妻で…」
「おい、ツッコミ。お前までボケてどーする。お前あれだろ、新しいギャグだろこれ」
「何言ってるアル。男と女の話にボケなんてないネ」
「男だとか、女だとか、百年早いっての酢昆布娘」

そう言うと、銀時は神楽の頭をくしゃりと撫で、そのまま通り過ぎて買物袋を冷蔵庫に押し込めた。
新八は、少しだけ様子の違う神楽を心配そうに見たが、そのまま通り過ぎ買ってきた荷物をソファで仕訳ていた。
こうなると、さっきまで浮かれ調子だった気分が一気にパアである。

「んだよ、てめえら。かわいい神楽ちゃんが、おめーらみてえなクルクルパーマと駄眼鏡に嫁いでやるって言ってのによー。無視してんじゃねーヨ」

名案だと、思っていた。
なんだったっか、ドラマの再放送を見ていたら、幸せそうな結婚式が映っていたのだ。


『汝、病める時も、健やかなる時も、共に…』
幸せそうな、ドラマの恋人達は笑って、『誓います』と応えていた。


ずっと、ずっと3人一緒にいられる方法ってなんだろうって思ってて、考えていて、そうしてこんなドラマがやっていて、
結婚をするってことはずっと一緒にいるってことで、とすれば、こんなダメな二人とでも、結婚すればずっと一緒にいられるってことなんだって考えついて、
その挙句がこの仕打ちとはあんまりだ。


急にしょんぼりした神楽におろおろとしだす新八。ほんとこいつダメアルと、毒づく神楽。
銀時の方といえば、やはりいつもの死んだ魚のような目で、どこか宙を見詰めて言葉を投げた。

「結婚なんざよお、ようは紙切れ一枚の話だろ。んなもん無くったってな、大事なもんさえつながってりゃ、夫婦だろうが、恋人だろうが、家族だろうが、他人だろうが同じようなもんだろ」


だから、くだらねーこと考えんな。


こちらの方を一切見ようとしない銀時に、神楽はきょとんとなって、しだいに頬が緩んできた。


こいつ柄にもなく照れてるアルか。




なにが最善?
なにを最良?




たぶんそれは、ここにある現在。
















 


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