どこかの国のあるお話。 |
―こりない人たち― |
Episode 1
「…どうしよう、王子さま」
「………」
途方にくれるコトリーナ。
ナオキビッチも…、さすがに今回ばかりは何もいえそうになかった…
――元を辿れば、それは昨日のこと…
「というわけで、明日から私たちいないから、よろしくね王子」
「あ?」
執務の合間をぬって、読書を満喫していた王子に、突然母親の王妃が尋ねてそう言った。
「…いないって、どっか行くのか?」
普段からしょっちゅう出かけている王妃なので、特に気にするでもなく、形式的に聞いてみた。
すると、王妃はそんな王子に不吉な笑いを残し…
「ほほほ、ちょっと皆で隣の国までお出かけしてくるわ。その間、コトリーナちゃんと二人で仲良くしなさい、いいわね」
「…はいはい」
なぜか、『二人』を強調する王妃に引っかかる物があったが
これも、いつものことだったので、王子はその言葉を軽く受け流して、また読書に没頭するのだった。
まさか…
「まさか、ほんとに『二人』しか居ないのか…?」
今朝、コトリーナが部屋に飛び込んできて、驚くまもなく部屋から引きずり出されてきて見ると
誰も…それこそ、衛兵、侍女その他もろもろ、すべての城の人間が消えていなくなっていた。
「なに考えてるんだお袋は…」
理由は分かりすぎるほど、分かっている。が、あまりにばかばかしすぎて二の句が告げられない。
思わず頭痛のする頭を押さえるナオキビッチ、そしてふと、横のコトリーナの様子がおかしいのに気づいた。
青い顔で、何かの紙を握り締めていた。
「コトリーナ?」
「ひゃぁぁぁっっ!」
青い顔のまま、顔を赤くして飛び退るコトリーナ。
分けも分からず、不信な顔をする王子に
「お、お、王子さま…、あたし…」
そう言いつのるコトリーナ。
目には涙まで浮かべてこちらを見つめる。
「…なんだよ」
さすがに、そんな目でいつまでも見られると落ち着かない気持ちになり、口調が普段よりきつくなっている、王子。
そんな王子にも気づかず、いまだ青い顔をしているコトリーナは、意を決して口を開く…が
「や、やっぱりだめーーーっっ」
と、そう叫ぶと王子から、全速力で離れていったのだった。
「?」
さっぱり分けが分からない王子は…
「で、今日の食事は一体誰が作るんだ?」
誰も居ない城の中で、再び頭痛のする頭を押さえるのだった。
Episode 2
夕暮れ時。
結局王子は、いつものように城での仕事を済ませ、昼は厨房にあったサンドイッチを食べ(なぜか二人分用意されていた)
気づけば、すっかり日は暮れていた。
その間、コトリーナとは一度も顔をあわせることもなく、気にもしていなかったのだが…。
「あいつ、何してんだ?」
さすがに、日も暮れてきても姿をみせないコトリーナのことが気にかかった。
「まさか…、こんなときにまた、迷子になってるんじゃないだろうな」
そう呟くと、王子は手にランプを持ち、コトリーナの部屋まで向った。
いつもなら、他の人間が廊下に明かりを絶やさずにつけているのだが
今日は誰もいなく、王子の持つランプの光量しか周りを照らす物がなかった。
薄闇の廊下を歩いてコトリーナの部屋まで辿りついた王子。
コンコンッ…と、ノックをすると
ガタガタッ…ガシャーン!!
「コトリーナ!!?」
ものすごい破壊音がして、思わずドアを開こうとする
「だ、だめっ、入ってきちゃ駄目―っ!」
と、コトリーナの静止の声がかかったが、すでに遅かった。
完全に部屋のドアを開けてしまった王子。
開けた瞬間、後悔したがもう遅い。
「…なにやってるんだ、お前」
とりあえず、それだけを呟くことができた。
けれども、もう一度コトリーナを見ることはできそうになかった。
コトリーナは薄い下着一枚の姿を、今日着るためのドレスでそれを隠しながら地面にすわり(へたり?)こんでいた。
「きゃぁぁぁっ!お、王子さまっ!?な、何で入ってくるのーーっ」
そう言って、体を隠しながら叫ぶコトリーナに王子はむっとして
「ああ、悪かったな、お前のひんそーな体みて。じゃ、俺出て行くから」
おそらくコトリーナの怒声が聞こえてくるだろうと思い、とっとと王子が出て行こうとした瞬間、むんず、とコトリーナに服を捕まれた。
「…おい、今俺に出て行って欲しかったんじゃなかったのか」
一応、コトリーナの方をみないように文句を言う王子。
「………」ぼそりと、コトリーナが何かを呟くのが聞こえた。
いまいち聞き取れなかった王子は「聞こえねーよ」と言うと。
「ど、ドレス…が一人で着れないの…」
「……………」
それを聞いた瞬間、王子はため息と共に脱力したのだった。
Episode 3
「ほら、そこに立てよ」
「う、うん…」
王子に促されるまま、王子が腰をおろしたベッドの前に立つコトリーナ。
端から見れば、ちょっと…いや、かなりいい雰囲気の光景なのだが…
「いたたたっ、いたいっ、王子さまっ」
「うるさい、お前のずん胴なんて、こうでもしないと入らねーだろ」
「ひどいっ」と言う、コトリーナのコルセットをきりきり締める王子。
「大体、服ぐらい自分で着れるようになっとけ」
「で、でも、普通ドレスって一人で着る物じゃないし…」
「ほかにも普通の服とかあっただろ」
「探したんだけど…、全部なかったの」
「………」
お袋のしわざだな…、と心の中で思う王子。
一体コトリーナの服を自分に着させて、何を企んでいるのやら…
「そういえば…」
と、何か思いついたかのように呟くコトリーナ。
「なんで王子さま、ドレスの着かたなんて知ってるの?」
「………」
押し黙る王子。
「えー、なんか怪しいっ!ねぇどうしてなの、ねぇっ…」
「……、聞くな」
一瞬の沈黙と共に、王子に思いっきりコルセットを絞られ
「!!!!!」
息が詰まって思わず悶絶すると、いきなり上からドレスをかぶせられて
「ちゃんと、袖とおせよ」そう言う王子をちょっと涙目になりながら睨んで、一応言うとおりにするコトリーナ。
すると、王子はいきなりベッドから立ち上がり、コトリーナの腰に手を回してきた。
「えっ!」
思わず身じろぎする、コトリーナ。
「動くな」
耳にかかる王子の声に、心臓が一気に跳ね上がる。
「お、王子さま…あの…」
ドキドキしすぎて、声がかすれる。
が…
「動くなよ、紐が結べねーだろ」
「へ?」
シュッシュッ…、とよく聞けば、布をとおす音が背中の方で聞こえ、がっくりするコトリーナ。
しかし、ドレスと着せてもらっているとはいえ、王子にこんなに寄り添えることがめったにないコトリーナは
(もうちょっと、こうしてたいよーっ)
などと、つかの間の幸せに浸っていたのだった。
そんなコトリーナの心境を知ってか、知らずか…
「いつまでくっついてんだ、ほら出来たぞ」
そう言って、数分後。王子にあっさり剥がされてしまった。
ようやく着せ替えが終わり、やれやれ…と口には出さないが、顔に出ている王子に
「あ、ありがとう、王子さま」
と、コトリーナがお礼を口にした瞬間。
ぐうううぅぅぅ…
コトリーナのお腹が空腹を訴えた。
「ひゃあっ、違うのっ、今日は朝から何も食べてなかったら…」
違うのーっ、と何が違うのかよく分かないことを叫ぶコトリーナに、苦笑まじりに王子は笑うと
「お前の分の昼のサンドイッチなら、まだ残ってるけど食う?」
そんな王子の言葉に、恥ずかしさのあまり、涙目になりながら「…食べる」と答えたコトリーナをつれて厨房に向おうとした、その時――
…カタンッ
「!!!?」
誰もいないはずの、部屋の外から物音が聞こえた。
いぶかしんだ王子が、部屋の外を見ると…やはり、元の何もない、暗い廊下だけだった。
「風だな…」
そう言って、そのまま厨房に向おうとする王子。
しかし、ふと右腕の重さに気づくと、コトリーナが自分の腕にしがみついてるのが見えた。
「おい…」
うっとうしい。と言おうとした王子だが、あまりに青い顔をしているコトリーナに先を続けることができなかった。
「や、や、やっぱり…」
コトリーナは一言そう言うと、震える手で王子の腕にしがみつくのだった。
Episode 4
「はぁ?幽霊?」
「きっとそうよっ!さっきの物音もこの食べ物もきっとそうなんだわっ、だって王妃さまの置手紙にそう書いてあったものっ!」
「お前…、お袋の話をいちいち間に受けるなよ…」
「だ、だってそうでもなきゃ、ありえないわよっ!!」
そう言って、今朝握っていた紙だろうか…それを握り締め、いきり立つコトリーナ。
あきれて、何もいえない王子は、黙ってそれを聞いていたのだった。
実は数十分前。
震えるコトリーナを引きずるように厨房まで歩いていた王子。
すると、しばらくして
歩く先にぼんやりと明かりが灯っているのを見つけた。
ひくつくコトリーナを無視して、そこに向ってみると…
さっき作ったばかりのような料理の数々がテーブルに並べられていたのだ。
「…きっと、幽霊があたし達をふとらせて食べようとしてるのよっ」
「幽霊が?食うのか?俺達を」
ばかばかしい。という風に王子は肩をすくめると、ひょいとテーブルのチキンを1つほうばった。
「あーーーーっっ!」
つんざくような声を上げるコトリーナ。
「たべちゃったのぉ!?」
「腹が減ってるんだ、食べるに決まってるだろ」
そう言って、テーブルにつき、得たいの知れない料理に手をつける王子。
コトリーナも、平然と食べる王子につられて、恐る恐る口につける。
「おいしい…」
「朝から食ってねーんだろ、夕飯も食わなきゃ、ぶっ倒れるぞ」
コトリーナのほうを見てそう言う王子に、コトリーナは素直にテーブルについて黙々と食べる二人。
いまだ不安の残るコトリーナは「これおいしーね」「そう言えば、昨日ね…」と王子に一生懸命話し掛ける。
王子も、「ああ」と相打ちを打つだけだが、それなりにほのぼのと食事をしていると
フッ…
「ひえっ!!な、なに?何にも見えない!?」
突然、部屋の明かりが消える。
ガタンッ、と思わず椅子から立ち上がるコトリーナ。
目が鳥目のコトリーナとは違い、うっすらと暗闇になれた王子が立ち上がって、ふらふらしてるコトリーナの傍に行き
「おいっ、見えてもねーのに、ウロウロすんな、つまずいても…」
そう言ってポンと手を肩に置いた瞬間
「きゃああああっっ」
と、突然に触れられ、叫んで跳び退ろうとする、コトリーナ。
しかし、まったく見えていないので、目の前にあった椅子にも気づかず
それに思いっきりけつまずくと…
ガシッ、と地面にコトリーナがぶつかる寸前で受け止める王子。
「…言った傍から、こけてどうすんだよ」
はぁ。とため息をつくのだった。
Episode 5
「今日はもう大人しく寝てたほうがいいみたいだな」
そう言って、コトリーナを部屋の前まで送ると(これ以上迷子になられても困るので)
「お前も、さっさと寝ろよ」そう言って立ち去ろうとする王子。
「お、王子さまっ」
さっさと自室に戻ろうとする王子に、思わず呼びかけるコトリーナ。
「なんだよ」と怪訝そうに振り向く王子。
そんな王子に今朝と同じく何かを言いかけ…
「や、やっぱいいっ」
首を勢いよく振って、部屋の中に入るコトリーナ。
不信そうにしばらくその扉を睨んでいた王子だったが。
カツ−ン…。
金物の靴音が聞こえ、思わずそちらに耳をすます。
しばらくその音が続いたが
やがて、その音が聞こえなくなっていくと…
「部屋に戻るか」
そう言って、今のことがなかったかのように、部屋に戻ったのだった。
そして、部屋に戻った王子は、入るなりベッドに腰をかけると
「疲れた…」(主に精神的に)
と呟き、サイドテーブルにおいてある本に手を伸ばす。
寝る前に少し読む程度の軽い本を数ページ読み進めていると。
コンコン…
部屋のノックが聞こえ、相手が分かっているだけに、めんどくさそうにドアを開く。
カチャ、とドアを開けた先にいたのはやはりと言うか、コトリーナだった。
「まだなんか用かよ」
けだるそうにドアにもたれかかり尋ねる王子に、コトリーナは意を決したように
「王子さま、一生のお願いっ!き、今日…部屋に泊めてほしいのっ」
一気に眠気を覚醒させられる一言に、思わず、もたれかかったドアからずり落ちそうになる。
そして、たっぷり3秒、間をあけてから…
「部屋に帰れ」
と、半眼でそれだけ言うと、王子は思い切りよく扉を閉めたのだった。
Episode 6
ドンドンドンドンドンッ!
「王子さまーっ!お願いっ!!一晩でいいのっ!」
「一晩も二晩もあるかっ、なんで俺の部屋で泊まるなんてことになるんだよ!」
「心細いじゃないっ!」
「俺が知るかっ」
ドア越しに言いあう二人。
その間、琴子はしきりにドアを叩いている。
ドンドンドンドンドンドンドンッ!!
「お願い、王子さま!迷惑かけないからーーっ!」
「……………」
冗談じゃない。
王子は、冷たい汗をかきながら、背中で押さえているドアを背中ごしに半眼で見る。
コトリーナの突破な行動は分かってはいたが、コレは予想を上まわっていた。
自分がまったく何もしないと思いこんでいるのか…
それとも、まったく何にも考えていないのか…
どちらかといえば後者だな、と漠然と思えるからこそ、余計にたちが悪かった。
「自分の部屋に帰って布団にでもかじりついてろ」
「だ、だめーっ、さっき部屋でも変な音がしたのよ!もう一秒だって一人でいたくないのっ!」
…そうして、二人の言い合いは10分ほど続き、いいかげん押し問答してるのもバカらしくなった王子がこらえきれず、ドアを開けた。
バタンッ
「王子さまっ」
扉を開けて現れた王子に、全開の笑顔で迎えるコトリーナ、それとはうってかわって怒り露にする王子。
「今何時だと思ってるんだよ、いいかげんにしろっ」
「ご、ごめんなさいーっ、だ、だって…」
しどろもどろになって言い訳をするコトリーナ。
そうして青い顔で
「このお城の幽霊って昔の王様が処刑されたって人なんでしょ、そ、それで、その人が恨みを持って夜な夜な現れるって…」
ぶっ、と思わず吹き出しそうになる王子。
「はぁ!?何だそれ?」
「だって、おばさまの手紙にもそう書いてあったんだもの!」
「だから、お袋の言うことを間に受けるなよ」
「で、でもっ、変な音とか、料理とか、おかしいことばっかり起ってるのよっ!」
「だから、それは…」
王子が、あきれながら言い募ろうとした、その時…
カツーン……
先ほど王子が琴子の部屋の前で聞いた、足音が再び聞こえた。
「ひえぇぇっ」
唐突の足音に、琴子は思わず王子にしがみつく。
「お、おいっ」
突然、飛びつかれ、王子はコトリーナごとよろめく。
よろめいた弾みと、コトリーナの体重でそのまま地面に倒れこむ二人。
…しばらく続いたその足音は、いつしかまた遠ざかっていった。
それでも、ずっと震えてしがみつくコトリーナ。
「…おい、いつまでくっついてんだよ」
「………」
よほど、怖かったのだろうか、いまだ自分の腕のなかで、小さく震えている。
そんなコトリーナを、王子はやれやれというようにぼんやり眺めて、そして何かを思いつき、フッと意地悪そうな顔をすると
「なぁ、幽霊の正体。おしえてやろーか」
コトリーナの耳元でそう囁いた。
「えっ?」
と突然の言葉に、コトリーナが尋ねる間もなく、ヒョイと王子はコトリーナを抱え上げた。
「えっ、えっ??」
なにが起きているのか分からないコトリーナ。そんなコトリーナを自分のベッドに放り出す王子。
「きゃっ」
バフッ、と布団に突然の落下にバランスの取れなかったコトリーナ。
一体何が、どうなってるのぉ…っ!!?
と、叫びたかったが、あまりのことに舌がカラカラになって、ろれつが回らない。
「おおおおお、お、王子さまっ!?ど、ど、どうし…っ、ふがっ」
ようやく叫べた、コトリーナの口をふさぐ王子。
「おまえな…もう少し色気のある声…いや、とにかくちょっと静かにしてろ」
そう言うと、王子は片手でコトリーナの口を押さえたまま、もう片方の手を彼女の腰あてがいながら、鎖骨のあたりに口付けをする
「!!!!!!!」
ビックリするのと羞恥とで、全身真っ赤になるコトリーナ。
そんなコトリーナのことは意にも介さず、王子は唇を、コトリーナの鎖骨からうなじへとなどるようにしていく。
王子の突発的な行動に、コトリーナはパニックになりながら
(お、王子さま一体どうしちゃったのーっ)
(たしか、お化けの正体がなんとか…っていってたんじゃあ)
と、ぐちゃぐちゃのなけなしの頭の中で必死でこの状況を考えていたコトリーナ。
すると、王子はそんなコトリーナの雑念を払うように彼女の耳元で囁いた。
「コトリーナ」
―ゾクリとした。
いつも囁かれるような声とは違う熱をもった王子の囁きが耳元から聞こえて、コトリーナは頭が真っ白になってなんにも考えられなくなる。
…が。
「……そろそろか」
それを付け足すように一言いうと、パッ、と王子はコトリーナからあっさり離れた。
「…え?」
ほけーと、離れた王子を見るコトリーナ。
そのコトリーナに「静かにしてろ」と指だけで合図し、王子は、ベッドから足音も立てずドアの傍まで行くと…
バンッ、とドアを蹴り開けた。
「きゃっ」バタッ…
「うわっ」バタッ…
「おっとと」バタッ…
「ひゃあっ」バタッ
しぃぃぃぃん………。
怖いくらいの静寂に、第一声を上げたのはコトリーナだった。
「お、お父さん?それに王妃さま…」
いまだに、ぼうっとしている頭で、束になってドアから現れた人々を確認するコトリーナと王子。
そんな二人に、王妃たちは「あははははは…」とひたすら笑ってごまかしていた。
どういうこと?と目だけで王子に訴えるコトリーナ。そんな彼女に、王子は肩をすくめると
「これが、幽霊の正体だろ」
とどうでもよさそうに、一言そう言った。
Episode 7
「くやしい〜!もうあとちょっとだったのにっ!」
「そ、そうだったかなぁ」
まんまと王子の罠に引っかかったとしか…と心の中で呟く王様。
王様の心の声など知りもしない王妃様は
「もうお兄ちゃんったら、いつまでたってもコトリーナちゃんとの結婚を納得してくれないんだからっ、こうなったらあたしも意地よっ、何が何でも二人を結婚まで持ち込んであげるんだからっ!」
そう言って意気込む王妃に「そ、そうだね」とうなずく王様。
おそらく次も、やっぱり協力させられてしまうのだろうと、心なしかあきらめながら王妃を見ている。それは、やはり周りの従者達も同じようなものである。
そして、こりない人たちは、今日もまたこりずにたくらみを考えているのであった…
――こんなとんでもない国の、いつかあった、とあるお話――
了