<カウントダウン第一弾>

 

恋心

 

 

今日は高校の入学式――

 

そこで、わしは生まれてはじめて人を好きになったんや。

 

 

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いま、わしは東京に一人でやった来た。

おとんや、おかんの反対押し切って東京のえらい高校に、必死で勉強して、上京した。

 

 

 

「おーなんや、ここがわしの学校かいな。けっこうええやないかー!」

気合ばっちり、髪もビシッと決めて、わしは、高校の門の前で大声で、自分の喜びを、噛み締めていた。

わしは、この東京で、一花咲かせたるでっ。

 

…と、そう言う思いで、わしの決意の叫びを

なぜか、通りすがる連中はなにやらクスクスとこちらを盗み見るようにして通り過ぎていく。

 

「なんや、けったくそ悪い奴らやな…」

 

わしに、どっかおかしいとこでも、あるんかいな。

 

そうおもて、回りの奴らに、声をかけようとするが、誰ともわしと目を合わせようとはせんかった。

むかついた。せっかくの気分が台無しや。

今日は、入学式やし、かったるいから、ふけたろか。

 

そうおもた時――

 

「あーーーーーーっっ」

 

なんや?

 

入学式早々、早くも帰ろうとするわしに向かって、女の叫び声が届いた。

 

そして……

 

ぐしゃっ!!

 

「っ、ぐ、ぐえっ」

 

…い、いきなり空からカバンが降ってきおったっ。

 

入学式で大量に買われた教科書と、それに空から落下したため加わる重量で、わしはたまらず、よろける。

 

「ご、ごめんなさいっ!!」

恐らく、カバンを空高く放り投げたであろう女が、こっちに駆け寄ってくる。

「何さすんじゃいっ、ごめんですんだら、けーさついらんわっ!」

そういって、わしは、女に向かって怒鳴りつけ…

 

そして、彼女を見た。

 

――やわらかそうな、こげ茶色の髪に、愛嬌のある大きな目。

――触ると、折れそうなくらい、華奢な体つき。

 

わしは、怒るのも忘れて彼女の方を見つめた。

 

すると、彼女は、さっきの奴らのように、わしに目を合わせまいとするような事はせず、ひたすら、こっちの方を見つめて、心配そうに

「ほんとに、ごめんなさいっ。あのっ、大丈夫だった?」

そうして、わしの目をずっと見つめて、話し掛けてきた。

 

はっ、と我に返ったわしは、自分でも分かるほど顔を真っ赤にして

「え、ええんや、気にせんとき」

わしは、そう言って、慌てて手を振った。

 

東京っちゅうんは、こんなかわええ子も、おるんやのぉ。

 

そうおもて、わしは彼女の顔をじぃ、っと見つめた。

すると、彼女はきょとんとわしの顔を見つめ返していた。

 

はっと、それに気付き、わしは彼女から目をそらすと

「あ、あの、その…、わしどっか話し方とかおかしいやろか…」

さっきから、わしが、なんか喋るたび、こちらをおかしそうに見る奴らのことを思い出し、わしは彼女に尋ねてみる。

 

すると、彼女は

「なんで?すっごくかっこいいよ、その大阪弁」

そういって、彼女はわしに天使の微笑をかえした。

 

 

その瞬間。

 

わしは彼女に恋をした。

 

 

そして、わしは彼女の手をにぎり

「わ、わし、金之助ちゅーんや、池沢金之助!!」

そう言うと、彼女はどこか後ずさり

「あっ、あたしは相原琴子っていいます。池沢くん」

「池沢くんなんて、他人行儀やっ、『金ちゃん』て呼んだって…」

 

 

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そうして、わしと琴子は出会った。

わしは、その日から彼女をずっと、ずっと、守ったると、心に決めた。

どんな、奴だって、俺の情熱には負けへん、琴子のことを一番好きでいようと…

 

 

 

――まさか、突然現れた、ドコの馬の骨ともしらない、冷血男に琴子を取られるとは、思いもよらないで…

 

 

 

 

あとがき:

 

…とりあえず、すみません(^^;

カウントダウンしょっぱなに、金ちゃん主人公話。

「恋心」というタイトルで、琴子か、入江のお話だと思ったかた、ほんとすんませんでしたっ

でも、一度は書いてみたかった、金ちゃん話。

琴子に負けず、6年の片思いをした金ちゃんが、soroはすごく好きだったので、なんか、馴れ初めチック(?)なお話を書いてしましました(汗)

このお話、一番書きやすいと思ったのは、やっぱ、関西弁なところでしょうか…(^^;

とりあえず、この機会に、金ちゃんをかけたことに感謝します。

 

ちなみに、タイトルはB’zの「恋心」から。

 

 

 

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6/6/2003