ビストロ・イタズラなKiss!
ここは、スタジオのなか。
そこで一人の男が、突っ立っていた。
「さあ、今週も始まりました、ビストロイタキス…」
そう言って、鴨狩は、スタジオの前にあるカンペを読み上げる。
スーツに蝶ネクタイ。いかにも着心地悪そうに着ている鴨狩は、カメラの下にある、カンペの方をにらみながら、こめかみに青筋を立ててスタジオのセットに立っていた。
「さて、今日お越しくださる、お客様は…」
そういって、鴨狩が読み上げると、“キンコーン”と奥の扉からチャイムがなり、とりあえず、そちらの方に行き、扉を開く鴨狩。
そして、お客…もとい、ゲストと顔をあわせると。
「………」
「………」
ゲストと鴨狩、双方の沈黙が続く。
先に、口を切ったのはゲストの方だった。
ゲストは、鴨狩を見ると…。
「…帰らせてもらう」
そういって、もと来た道をUターンしようとする。
鴨狩もその動作に、とっさに反応し、ガシッとゲストの肩をつかみ、止める。
そして、おたがい、眉間にしわをよせると
(ま、まて、入江っ、お前に今帰られたら、俺が困るんだよ)
(知るかよ。こんなくだらねーの、ない方が、世のためだ)
そう言って、鴨狩の腕を払いのけ、帰ろうとする入江。
それを逃すまいと、鴨狩が必死に捕まえて
(たのむ、俺の一生のたのみっ、お前いなかったら俺一体どうしたらいいのかわかんねーだろ)
(………)
あまりに、必死形相の鴨狩に押されて、入江は大きなため息をついて、扉をくぐり、席についた。
すると、ホッとしたように、鴨狩も隣の席に着く。
「あー、というわけで、今回のお客様は「入江直樹さん」です」
自分でも、入江に「さん」付けするのに抵抗を感じながら、鴨狩が、入江を紹介すると、スタジオから拍手が湧く。
「えーと…、それでは、料理人の方の紹介です…。まずは、琴子&真里菜ペア…」
がたんっ。
入江が、それを聞くやいなや、椅子から立ち上がり、真っ先に出口に向かおうとする。
「わーーっ、まてまてまてっ」
あわてて、引き止める、鴨狩。
すると、入江は、真剣に、キッパリと
「俺は、死ぬ気はない」
「…て、おまえ、自分の奥さんをそこまで言うか?」
「だからだよ、あいつになに作らそうってんだっ」
「だから…、それをお前が決める番組なんだよ」
「わかった。じゃあ、俺は今何も食いたくない。それでいいだろ」
「だめに決まってるだろっ、とにかくなんか注文してくれ」
そう鴨狩が言うと、入江はしばし、考え――
「食えるもの」
そう一言言うと
『ウィ・ムッシュ!!』
と、琴子&真里菜、幹&智子ペアが盛大に返事を返した――
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「…なぁ」
料理作りがはじまり、現在、ゲストとのフリートーク時間。
スタッフのカンペには「奥さんとの馴れ初めを話題にしろ」だの「社長より医者になった経過を聞け」と書かれてたりする。
が、それよりも…
『あーーっ琴子!なにやってんのっ、それ、塩じゃなくて、小麦粉よ!!』
『えぇっ!?って、あっ、あたしお鍋に、アレ入れちゃった。』
『ウソっ、アレいれたの!?どうすんのよ』
アレって…?
鴨狩は、下にある、厨房の様子が気になって仕方がなかった。
そんな、鴨狩を横目でジロッと入江は見ると
「おれ、『食えるもの』って、言ったと思うんだけど」
「………」
冷や汗しか出ず、何もいえない鴨狩は
「と、とりあえず、下に行ってみるか…」
なんだか、あきらめたように、鴨狩と入江は下の厨房に向かうため席を立った…
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「できたーーっっ」
そう言って、注文から約1時間後。両チームの料理が完成した。
トントン、と入江の前に並べられる料理は、見た目は存外普通には出来ていた。
幹&智子ペアの料理は、手のこんだ、ロシア料理であった。
ボルシチに、ピロシキ。ロシアの代表的な料理がうまそうなにおいをだしていた。
そして、琴子&真里菜ペアの料理は、ごく普通の家庭料理。
肉じゃがに、味噌汁…。じつに普通の家庭料理だった。
だが…
(なんで、味噌汁からカレーの匂いが…?)
そして、小麦粉の行方はどこに…??
怖い考えに行き着きそうになり、鴨狩はそれをばっさり切り捨て、入江に食べるように勧めてみる。
同じような事でも考えてたのか、入江も箸をつけるのに、少々戸惑っていた。
だけど、横にいる、琴子がじいっと、入江が食べてくれるか心配そうに見られては、食べないわけにも行かない…。
(ご愁傷様…)と、心の中で、同情する鴨狩。
そして、入江は、決意し、一口肉じゃがを食べた。
そして、食べたと思ったとき、鴨狩は分かってはいたが一応、入江に味を尋ねてみる。
「ど、どんなもん?」
「(聞くなっ)」
声が、出せないのか、目でそう言う入江に、鴨狩はつくづく、同情する。
悪いと思ってても、ついつい、笑いが込みあがるのは、日ごろ、つんと済ましている奴なだけに、こういう災難に遭うのが面白いからだ。
が、そんな笑いも、目の前のスタッフのカンペにより一掃される。
言いたくないが、言わなければならない。
鴨狩は心底、この世の終わりのように、一言
「し、試食タイム…」
そして、その後、放送は20分ほど、『しばらくお待ちください』の画面が続いたのだった。(一応生放送らしい)
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「と、言うわけで…」
何とか復活した、両者ペアと、鴨狩(入江は普段で相当慣れてたらしく、あまりダメージはなかった)
「早速、勝者を決めたいと思うけど…」
そう、鴨狩は言うが、もう聞く必要があるのか?と、半ば思ってたりもした。
そして、
あえて、聞く必要もなく、ダレもが口をそろえて勝者の名前を言った。
「入江直樹」
そうして、勝利のファンファーレは入江直樹に送られたのだった――。
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―じつは、さきほど、調理の様子を見るために、下に下りたとき…
『なに作ってんの?』
『あ、入江さぁんっ!あ、これロシア料理なんですっ!!』
『ふーん、どんなの?ちょっと貸して』
―そういって、入江は幹の持っていた、本を借りて数分読むと、次にはプロが作るような、料理を作ってしまった。
そして、そのとき入江が作った料理がどれより、うまかったのであった。
ゲストが勝者という、前代未聞の展開に、スタジオは湧くが、鴨狩はこの後どうするか戸惑った。
「えーと、ここで、普通なら勝利チームに、ゲストが祝福のキスなんだけど…」
ゲストが勝者って、どうすれば…??
鴨狩が途方にくれていると、それに気付いた入江が。
「なんだ、キスすればいいんだろ」
そう言うなり、入江は琴子のあごを、指で持ち上げ―――…
―その後、またしても『しばらくお待ちください』が流れたのは、言うまでもなかった。
完
(おまけ)
鴨狩:なんで、おまえが、勝手に相手決めてんだよっ
入江:俺が勝ったんだから、誰としてもいいだろ。
鴨狩:そ、それは…そうなのか…??
あとがき
ナギナギ様っ!お待たせいたしましたっ(^^;
20000HITキリリクとしてリクエストしていただきました。
「ビストロSMAPならぬ、ビストロイタキス(笑)」
という、ご要望でしたが、どうでしたでしょう??
…はっきり言って、むちゃくちゃな話になって、しまい、なんていっていいやら…(汗)
ビストロSMAPは毎週見てるにもかかわらず、いざ文章にするとなると、難しいですね…(^^;
こういうノリ、soroはかなり好きなんですが、ナギナギ様のイメージに合ってなかったら、どうしよう…と後になって後悔(おいっ)
しかも、ほとんど、鴨狩と入江しか出てない始末…。(涙)
ナギナギ様。とにかく、ありがとうございましたvv