−asagiri-
ACT1
なぜだろう..........
こんな想いはもうしたくないはずなのに....。
いつもの朝、いつもの生活、いつもの風景。
それが、壊されるなんて考えてもいなかった。
いや、分かっていたのかもしれない、なのにどこかでそれを望んでいる自分、それを認めるのが恐かった自分にうそをつきたかったんだ。
「.....おい、...オ、..デュオ。」
朝、いつもの退屈なそしてしあわせな....
「いいかげんにしろっ!」
ドテッ!ガキッィ!
「いってぇぇっ!」
「お前がいつまでも起きないからだ。」
「だからって、ベットから振り落とすことないだろ?」
ベットから勢いよく落ちたデュオは頭を押え込みながらもそもそと起き上がってきた、だがいまいち頭がふらつく何だろう、何か......
「懐かしい夢を見た...」
「デュオ?」
きれいな黒髪がこちらを見ている、だがどうにも頭がはっきりしない一体自分は..
「...おれは、ダレなんだ?」
まるで忘れ物でもしたみたいに、ぽっかりとそこだけに穴ができてしまったみたいに....。
ただ目の前の少年がひどく変な顔をしたのだが俺にはなんだかそいつのその顔が泣き顔のように見えた。
ACT2
「お前はそこでじっとしていろ。」
「.........」
返事がない、答えたくなくても普段自分の3倍以上はしゃべるやつがこうもおとなしいと返って気持ちが悪い。
記憶喪失
聞いたことくらいはある、だが見たことはなかっただからこいう場合どういう態度でいいのかわからない。一体自分は、どうすればいいのだろう。
と、想ったとき、ふっとそうおもった自分がなんだか、おかしかった。
「昔の俺はこうではなかった。」
変ったのか、俺は。
そしてデュオのほうを見て、
認めたくはなかったが、俺はこいつのおかげで、変われた気がする。
戦争から2年....
自分は、デュオと暮らすことになった。はじめはデュオの親切の押し売りが鬱陶しかったが、しばらくしてみれば、すっかりデュオのいる生活に慣れきってしまっていた。そのせいだ、だけど、デュオは変わったのだろうか?あいつは...
「あのさ、も、いいだろ?」
意味が分からない、なんのことを云っているのか?
「なんのことだ?」
思ったことを聞いてみる、普段のデュオには絶対にこんな素直にハナレナイノニ、
「おれだよ、おれ。なぁ、もう帰ってもいいだろ?」
「帰る?」
お前の帰る場所はここだというのに、
「どこに帰るというんだ?」
「自分ちだよ、何でおれがここにいるのかなんてあんまり気にしちゃいないけど、どうせまたどっかに引き取られたんだかの、口だろうし、おれはなんて言おうがあそこを離れる気はないからな。」
デュオが口早にそういって出て行こうとする、が、ヒイロがデュオの腕をつかむ。
「お前の帰る場所はここだ。」
「はぁ?!何いってんのお前?」
「ちっ」
これほど自分の口下手さを呪ったことはない。なんとせつめいすればいいのか。
っと、ヒイロは妙な違和感を感じた。帰る?どこにだ?こいつは、
「記憶喪失ではないのか?おまえ。」
「えっ」
今度は、デュオが戸惑う、さらにヒイロはたたみかけるように。
「自分が誰かも分からないんだろう?一体お前はさっきからなんのことをはなしているんだ?」
「あれ?おれ一体.......っつ!」
デュオが突然頭を抱え込んでうずくまる。
「おっおいデュオっ!どうした!?」
ヒイロは突然しゃがみこんだデュオの体を抱きかかえようと手を伸ばしたが其れはむなしく、デュオはそのまま頭を抱え込みながら意識を手放した...。
ACT3
「そのうち治るでしょう。」
医者の診断はそんなものだった。
おれの記憶喪失は風邪か花粉症かっていうんだ、じょうだんじゃない!?しかも、
「そうですか。」
おれが、気絶してる間にこんなところに連れてきた男(ヒイロとかいったかな)は真顔でそんな事にうなずいてやがる。
「やってられるか、おれは帰るからな!」
そう怒鳴ると、ヒイロがにやっとわらって
「どこに?」
「っつ、がっっ!!」
またあの激痛がおれの頭を襲う。
どうやらおれは、あれ以来すっかりこの頭痛に悩まされてる。その事をおれは無意識では認識しているようだが、他人に指摘されると、極度の混乱に陥って、頭痛が起こるそうだ。
「重傷ですな。」
無責任な医者がまたしても無責任なことを言う。
大きなお世話だ、どちくしょう!!
おれは,まだ痛む頭を押さえ、ヒイロに向かって。
「とにかくおれは、お前に事なんか知らないんだからおれはおれで勝手にやらしてもらうからな!」
どばんっ
おれはさっさと言いたいことを言うと部屋から出て行くことにした。
「っ!まて!!」
ヒイロが追いかけてこようとしたが、おれはさっさと、病院から抜け出した。
なんか叫んでいたが、おれのしったことじゃないっとにかくおれはあのヒイロとか言うやつも病院も嫌いだきっと記憶喪失前だったとしても、そうだったとそうっだたに違いない。
そうこうしている内に公園におれは、着いていた、どうやら基本的なことは覚えてるらしい、それだけは、唯一助かったことといえるだろう。
「.............」
鳥が鳴いている、小さな子供が、笑い声を上げてはしゃいでいる。
多分おれは、公園が好きなんだろう。なんだか心が落ち着く、忘れかけていた何かが見つかりそうな感じだ。
「おれは....」
ぽつ、とそんな事をぼやいたとき。
「マックスウェル」
そんな低い声が、公園のまん中に突っ立ているおれにささやいた。
「なっ!?」
なんのこともないその一言におれは体を身じろぎしてしまった。
聞いたことのある名前だ。
どこで?
いつ?
わからない、が、その言葉は、おれを振り向かせるには十分すぎるほどの効果だった。
そしておれは、すべてを悟った、いや、後から考えると本当に馬鹿だと思うが、それはなんともタイミングの悪い願望、自分の幸せを形にしたもの......それだった。
「神父さん....」
「お帰りなさい、デュオ。」
目の前には、優しい瞳をした、かつて戦争に巻き込まれ、死んだはずの老神父がいた。
ああ、そうか。
デュオは思う。
おれの帰る場所はここだったんだ。
そしてデュオは、はにかみながら、
「ただいま。」
....そういうと、デュオは神父の胸に飛び込んだ..........
ACT4
「ちっ!一体どこにいったんだあいつは、まったく本当に、じっとしていられないのか。」
ヒイロはもう一度舌打ちをすると、とりあえず周りを見渡す。先ほどデュオが訪れた公園である。
デュオはいつもよくここにきて昼寝をしていた、もしかしたらここに来ているかもという思いで来てみたものの当ては外れたみたいだ。
「ちがったか....」
ヒイロは出て行こうとする。
だが、目の端に、見覚えのある長い三つ編みが目に付いた。
「あいつっ!」
あれはデュオだ。何故あいつが見知らぬ男の車に乗り込んでいるのかはわからないがあれは間違いなくデュオだった。
追いかけようとするがすでにもう、車の陰も形もなっかた。ヒイロがその場で悔しそうに下唇をかんで、
「あいつのことは底無しの馬鹿だと思っていたが、それ以上のくそばかだっ!」
そう罵った後ヒイロは、先ほど車のあった位置を見て。
「車のナンバーも連れ去った男も覚えている......」
...いつでも取り戻せる。だがしかし、あいつが攫われるなんてへまをするだろうか、あのようすはどうみても......
ヒイロはそこで考えるのを止め、少し思い付いたかのように来た道を駆け戻った。
2年間一度も連絡の入れなかったあいつらに、.....ひいろはなぜかそうおもったのだった。
ACT5
そこは教会だった。
懐かしい、自分の帰るところだ。
自分には父のような神父と、母のように厳しかったシスターがいた。
何もかもが懐かしい。
「さあデュオ、そんな所に突っ立てないでこっちにいらっしゃい。」
入り口の前で立ち尽くすデュオを見て、神父は椅子に座るよう声をかけた。
「ああ。」
そういってデュオは、神父のもとへ駆け寄った。そして抱きしめた。
「おやおや、デュオはいつになっても甘えん坊だな。」
「ちぇ、いいジャン別に。」
デュオはふてくされた顔をしたが、その手を放さないでいた。
すると、
ピーー
と、神父の体から、通信機か何かの音がした。何だろうと、覗き込もうとするデュオを遮って神父は、席を立ち、
「すぐ戻ってくるから待っていなさい」
とそれだけを言い残して教会の外へ出た。
ギイリ、パタン
ドアが閉まったと同時に、神父の顔は、あの優しい老神父の顔付きではなかった。その男は、通信機を手に取ると、相手の方と話し始めた。
『どうだった、そっちのほうは?』
通信機の向こうの男が話し掛けてくる。
「ああばっちりだ、あのデュオとか言うやつは都合の言いように、記憶喪失らしい。」
『そうか、それならば、計画は予想以上に早く進みそうだ。だが、気をつけろ、腐っても奴等はガンダムのパイロットだ事は慎重に進めろ。』
「ちっ、わかってるさ、奴に俺を昔育ててくれた神父だと思わせそして、奴に地球連邦の隠し持っている極秘ファイルをハックして持ち出させ後は、証拠と共に消す。いかにも都合のいい計画だが、あのデュオとか言う奴の敬愛ぶりからいってほぼ完璧だな。わかってる、後はこっちで何とかなる、お前こそへぼルナよ。」
それだけ言うと神父の男は一方的にきった。そして
「ふっ、あの、ガンダムのパイロットならこのくらい朝飯前だろう、それよりももっとさらに利用価値があるはずだ。」
何も証拠と共に消すことはない。
そういうと神父はデュオのもとへとゆっくり向かうのだった。
ACT6
「そうですか、デュオが記憶喪失に」
ヒイロは自宅のパソコンと向き合ってディスプレイに映る三人にさっきまでの出来事を話してみた。
「そうだ、しかも奴は何者かにさらわれて今のところ行方不明だ。」
そう言い終えるとみな三人三様の言葉が返ってきたまず第一声を出したのは、
カトルだったがそれでも動揺しているみたいだった。
五飛などは、声も出ずただ絶句しているようにも見える、
トロワは相変わらず考えていることが読めない。
が、口を開けて
「お前とデュオは一緒に暮らしていたのか。」
と、するりとみなが聞きたかったことを口にした。
何だそんな事か、とヒイロは「ああ」とうなずくとなぜか3人とも冷や汗みたいなものをかいていた。
が、そんな些細な疑問よりも今はデュオのことで話があるのであって世間話をしているわけにはいかない。
「あいつが、何故そんな怪しげな神父についていったか何か理由を知っているのではないかと思って連絡を取ってみたが何か心当たりがあるか?」
そういうとカトルが
「彼の小さいときに少しの間だけ教会で育ったという話は聞いたことがあるけれど、でもそこの人は連合の襲撃によって、亡くなったて、聞いたけど」
と、ばつが悪そうに言ってきた。
些細なヒントだ、だがしかしヒイロにはわかってしまった、すべて。デュオがあれほどに帰ると思っていた場所が、何故あんな神父についていってしまったのかも、
「トロワ。最近のOzの残党についてのデータはあるか?」
「ああ、最近はここ大きな動きは見せてはいないようだな」
すると五飛が
「だが、しかしそれは前ぶれだったのかもしれないな。奴等は確かにここ最近動きがないように見えるがしかし俺には嵐の前触れにしか思えん。」
五飛はそれだけ言うと通信をそのままきってしまった。
「俺も、そう思う。まあここからでは少し遠いから、加勢にはいけないがデュオを救ってやれあいつには借りがある。」
と、いってトロワも通信をきった。
カトルも
「それじゃあ、何かあったらまた連絡を…
それから、デュオとお幸せに。」
と、何だか意味ありげな言葉を残して通信をきってしまった。
勿論そんないいまわしは通用しない鈍いヒイロは、そのまま、Oz残党のデータにアクセスした。ふとそこに、引っかかるデータが見つかった。
「この近くの教会にOz残党がいる気配あり?ここだな、」
と、場所にチェックを入れてとっとと出かけた。
「いつものデュオならこんな心配はしないが今回は別だ手後れでなければいいが…」
と言って、少し焦った顔をしたヒイロだった。
ACT7
「デュオに頼みがあります。」
真剣な顔をした、神父の様子を見てただ事ではないと感じたデュオは
神父の顔を覗き込むようにして尋ねた。
「どうしたんだよ、俺でできることがあるなら何でもするぜ」
そういってデュオは神父を安心させると用件を問いただしてみた。
「要するに政府機関を掻き回せることができればいいんだろ?」
神父の話を聞いたデュオは少し眉をひそめながらも簡単に応じた。
まあみてな、とデュオがいってすぐさま手持ちのノートパソコンに手を描けた。普段のデュオならまずこんな事はしない。だが今のデュオには神父しかいないのだ。
パチン。
と、音が鳴ってデュオは最後の人押しのエンターキーを押すところで、
彼が現れた。
ACT8
ズバン!
と、教会の扉を打ち抜いて現れたのは紛れもなくヒイロだった。
ヒイロは目の端にデュオを捕らえると今度は神父のほうに目をやった。
そして、
「デュオ、いつまでふざけた茶番をするつもりだいいかげん人をからかうのはよせ。」
とつまらなさそうにつぶやいた。
「ぁ、やっぱばれてた?」
といままでこらえていた笑いをついに吐き出した。
「なっ!」
神父は驚いた様子だったが、ヒイロは種明かしをした。
「貴様はデュオを利用するつもりでまんまとだまされたと言うことだ。」
「そういう事」
と、デュオはいかにも人を食った笑い方をしながら神父に近寄った。
「どういう事だ、一体...?」
神父は、うろたえながらも銃を手にする。
「俺は、あんたを見たときから記憶が戻ってたんだよ、正確に言うならあんたに会ってだ。どうしてだか分かるか?」
神父は驚愕してはいたが一応かぶりを振った。
「似てたんだよ皮肉にもあんたの顔は本物の神父にな。」
「デュオ...」
これはヒイロも知らなかったことだ。
ピーポー、ピーポー
サイレンの音が近づいてくる。
「俺が連絡した。
後は専門家に任せれば、いい」
先ほどのデュオの顔になぜか危機感を覚えたヒイロは早くこの場からデュオを連れて立ち去りたかった。
だが
「ふははは、もう遅い先ほどお前が打ったデーたはすでに転送されて仲間の元に届いているはずだいくら貴様らとてまにあわ...」
ピ−
と、後ろのパソコンから機会音が聞こえてきたと思うとエラーと言う文字が画面いっぱいに広がり最後には一文字『死』と、打たれていた。
「ばーか。俺はあんときも正気だったんだぜ。そんなもんおまえらの計画ごとウイルスで粉みじんにしてやったよ。」
「そんな....」
これまで築いてきた計画が...そんな事を考えてると急に胸が苦しくなった。
痛みに我慢しきれず。うずくまった。
「もうソロソロかな、即効性の毒の効果が現れるのは」
「毒!?」
ヒイロが聞き返した。そんな事をすればデュオは殺人者になってしまう戦争でもないのだ今は
だがもう神父はそんな事聞いてはいない、痛みに耐え切れず失神してしまったからだ。
「大丈夫だよ、死なないから、ま、よくて廃人だけどね」
そんな事を言ってデュオはにんまりと笑った。
そして
「俺おだましたらこういう事になんのだぜ、じゃーな
ヒイロ行こうぜ」
そういって彼は長い三つ編みを揺らして教会を立ち去った。
ヒイロはしばらくデュオを見ていたがすぐにそれを追いかけた。
ACT9 エピローグ
「しっかしそれにしてもあれはないよな」
「......」
「普通、あんなんに引っかかるやつっているか?記憶ソーシツでも俺だったら絶対見抜いてたね。」
「.....」
「お前がもう少し遅れたらなぁ、俺がこうちょちょいのちょいで」
「殺していただろう?」
「....聞いてたの」
「....記憶はあるのか?」
「へっ?あっああ、記憶ねお蔭様でもう絶好調ってくらい元に戻ってるぜ」
「そうじゃない、記憶喪失のときの記憶は有るのかと聞いている。」
「...お前言葉少なすぎ。ま、そりゃまあ一応ね」
「そうか」
「.....」
「.....」
沈黙がつづく
「お前は..」
沈黙を破ったのはヒイロのほうだった
「お前は一度も俺の前では眠らないな」
「えーヒイロ君俺の寝顔なんか見たいのー!?」
「みたい」
「..恥ずかしいやつ...」
「俺はお前のおかげで変われたと思う。お前は?」
「おー、いつにもなくヒイロ君が喋ってるー!って何もぶつ事はないじゃね−か」
「お前は?」
「....わかんねー..けど、変わりたいとは思ってるぜ
俺さ、いつもあの戦争のころが思い出せる、何だか今よりもっとずっと生きていられたって感じられる瞬間が多かったからかもしれないけど、
実際のところあまり変わりたいと思ってねーのかもしれないな。」
「俺が変えてやる」
「へ?」
「お前が変わりたくなくても俺が捻じ曲げて変えてみせる。」
「.....」
「俺を信じろ」
「お前、本トーに変わったな、なんかこっちが照れるぜ」
「.....」
「ま、期待して待っててやるよ」
そういって彼らは自分のアパートに帰っていった。
もう夜は明け空がしじらみはじめていた。
「今日朝飯なんにするー?」
「納豆と梅干し」
「げー俺それ嫌い」
「好き嫌いはよくない」
そんなたわいない話をしながら彼らは家路につくのであった。